僕帝国幻想

見知らぬ場所にいる人間には、どうして憧れてしまうのだろう

読書

筒井康隆『ニューシネマ「バブルの塔」』

『だから僕は音楽をやめた』というヨルシカの新しいアルバムに鮮烈な印象を受けた。 時代を区切ろうとするティーンエイジ的オールオアナッシングな考えで、元号の節目とする態度が見えたと思うと、文学に目を向ければ大御所の筒井康隆が平成最後の大傑作とい…

『ゼロからトースターを作ってみた結果』

平成が終わろうとする今、歴史にとても惹かれている。 僕は近ごろ、歴史の本ばかりを読んでいる。 この一冊は最高の歴史書だった。 トーマス・トウェイツの『ゼロからトースターを作ってみた結果』である。 ゼロからトースターを作ってみた結果 (新潮文庫) …

『数学者たちの楽園』サイモン・シン

アメリカのアニメ『ザ・シンプソンズ』といえば、黄色いキャラクターは見たことあるというくらいの知名度ではなかろうか。そして、どうせくだらないアニメなんだろうという偏見を持たれている。ところが、このアニメを作っているのは、数学の天才たちなのだ…

「塔と重力」上田岳弘

僕にはハルキスト持論はある。日本の文学好きに一番読まれているの作家が村上春樹なので、小説に少しでもそれっぽいところがあれば、春樹風と言われてしまうことである。 さて、上田岳弘の「塔と重力」は、そんな春樹風と言われてしまうような小説である。 …

『しんせかい』山下澄人

最新の芥川賞作、山下澄人の『しんせかい』は、幻のような小説である。 似ているような小説がほかにありそうだけどない、新奇な小説で、芥川賞にはふさわしいように思う。 あらすじは青春小説そのもので、また主人公の名が作者の名である通り、私小説でもあ…

『世界でもっとも美しい10の科学実験』ロバート・P・クリース

歴史上でも重要な、これら10の実験をすべて知っていた人は意外と少ないのではないか。 僕が初めて知る実験もあった。1つ目の実験、「エラストネスによる地球の外周の長さの測定」は紀元前3世紀のギリシャで行われた。この実験における、重大なパラダイムは、…

『きみの言い訳は最高の芸術』最果タヒ

僕が最果タヒを知ったのは、『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』という素晴らしい題のついた小説で、それ以来、彼女の言葉に惹かれている。 初エッセイ集の『きみの言い訳は最高の芸術』には、共感や気づきや、あるあるといったモチーフ…