僕帝国幻想

見知らぬ場所にいる人間には、どうして憧れてしまうのだろう

描きおろし漫才「4文字カタカナバンド」

ボケ&ツッコミ「どうもー、よろしくおねがいしまーす」
 
出囃子とともに手をたたきながら入場。
 
ツッコミ(T)「やあやあ言うておりますけど、漫才やっていきたいと思います」
 
ボケ(B) カッコつけたポーズ
 
T「そんなアーティスト気取りの格好して、どうしたん」
 
B「いや、わし、漫才師よりもミュージシャンになりたい思ってんねん」
 
T「わし、言うてるのにか。漫才やっていこうや」
 
B「まあ、見た目はこんなんやけど、おしゃれな名前あったら、これもカッコよく見えてくると思うんや」
 
T「うーん」
 
B「だから、わしのために、何かカッコいいアーティスト名をつけてくらんか」
 
T「くらんか」
 
B「ほら自分、いつもバイトさぼってヘッドホンつけてるやん」
 
T「それ、コールセンターのバイトだから」
 
B「時給19円な」
 
T「安! 919円や、ケタおかしいやろ」
 
B「919円でクイックと覚えて帰ってください」
 
T「いやいや、覚えんでええわ」
 
T「でも、最近おしゃれな4文字のカタカナのバンド増えているんですよ」
 
T「本当ですよ。例えば、ハスピエ」
 
B「ハスピエ。聞いたことあるわ」
 
T「バンドじゃなくても、バルーン、スカート、ヨルシカ、アンテナ。知ってます?」
 
B「わからん。申し訳ないけど、全然知らん。たぶん、頑張ってるとは思う」
 
B「わし知っとるの言えば、ミスチル、ドリカム、コメコメや」
 
T「米米CLUB」
 
B「あと、ユーミン、クイーン。ザ・ブーム
 
T「島唄
 
B「ちゃうねん、ちゃうねん。わしはおしゃれ感が出てるよりも、なんというか、もっと硬派なほうがええねん」
 
B「氣志團みたいな感じがカッコいいんちゃうかな」
 
T「3文字系かー」
 
B「3文字系?」
 
T「漢字3文字の名前の人たちのこと、まとめてそう言うんや」
 
B「ほんまかいな」
 
T「たとえば、秦基博
 
B「たしかに3文字やけど、そんな硬派じゃないけどな」
 
T「じゃあ、小林旭
 
B「どうぅも~、小林旭で~~す」(モノマネ)
 
 
B「って、誰も知らんわ!」(ノリツッコミ)
 
B「お客さん、わかる、小林旭? けっこう似てんねんで」
 
T「布施明
 
B「♪バラより美しい~」
 
B「って、さっきよりシラケとるわ」
 
T「♪ああ、きみ~は~」
 
B「♪変わった~」(モノマネ)
 
B「だれも笑っとらん」
 
B「わし、あきらじゃねえし」
 
T「一青窈
 
B「♪ええぇーーいぃーーああああー」(前のめりでモノマネ)
 
B「って、硬派じゃないやろー、むしろ軟派のほうや!」
 
B 片足あげて靴を勢いよく脱ぎ捨てる!
 
T「裸足やん!」
 
B もう片足も脱ぐ。裸足。
 
B「一青窈嫌いやないねん。むしろ、好きや」
 
B「だから、数字入っているのはリスペクトでいいかもしれん」
 
T「一のことかー」
 
T「じゃあ、次は二文字いってみるか」
 
B「二文字はそんなんおらんやろ」
 
T「ゆず」
 
B「すぐおったね」
 
T「B’z」
 
B「無理ない?」
 
T「U2
 
B「おぉ! 数字、入っとるやん」
 
T「どや」
 
B「たしかに、わし、U2になりたかったかもしれん」
 
T「なりたい?」
 
B「じゃあ、U2やるから」
 
B「わしがボノで、自分エッジな」
 
T「ええけど、しかたないな。お客さん、U2知ってる?」
 
二人、舞台袖の際まで下がる。
もう一度拍手しながら登場。
出囃子は"Vertigo"のイントロ。
 
ボノ&ジ・エッジ「どうもー、よろしくおねがいしまーす」
 
ボノ(B) 手を挙げて「ボーカルのボノでーす」
 
ジ・エッジ(T) 手を挙げて「ギターのジ・エッジでーす」
 
ボノ&ジ・エッジ「二人あわせて、U2です! よろしくおねがいしまーす」
 
T「って、漫才やん!」
 
B「いい感じだったやん」
 
T「いやいやU2は4人組バンドや」
 
B「二人でもええで」
 
T「だめだめ、怒られるわ。諸外国中から。裸足やし」
 
B「あっ、いま、わし、完璧なバンド名思いついたわ」
 
T「二文字で数字の入ったやつ?」
 
B「19や」
 
T「いや、それ俺の時給やん」
 
T「って、もうええかげんにしろ」
 
ボノ&ジ・エッジ「どうも、ありがとうございましたー」
 
二人、頭を下げて退場