僕帝国幻想

見知らぬ場所にいる人間には、どうして憧れてしまうのだろう

前田司郎「愛が挟み撃ち」

前田司郎の描く青春が好きである。 青春には可能性が無限に開かれている。比喩として量子的で、Aでありながら、NotAでもある状態こそが青春だ。その性質は、言葉にすると失われてしまうもので、さらにはAではなくA’のように違うものとなる。 言葉にした途端…

沼田真佑『影裏』

僕が芥川賞を読むのは、だんだんと義務感によってきた。半年に一度の賞で、毎度、新人の傑作が現れるようには思えないからだ。最新の受賞作、沼田真佑の『影裏』は、文學界新人賞のデビュー作で芥川賞となった。しかし、小説の優劣とは関係なく、芥川賞の受…

はじめて読むドラッカー

「成果をあげる責任あるマネジメントこそ全体主義に代わるものであり、われわれを全体主義から守る唯一の手立てである」 僕がドラッカー(1909−2005)に触れて、強い印象を受けたのは、『マネジメント』における上記の一文である。ドラッカーを読んだ事がなく…

『数学者たちの楽園』サイモン・シン

アメリカのアニメ『ザ・シンプソンズ』といえば、黄色いキャラクターは見たことあるというくらいの知名度ではなかろうか。そして、どうせくだらないアニメなんだろうという偏見を持たれている。ところが、このアニメを作っているのは、数学の天才たちなのだ…

「塔と重力」上田岳弘

僕にはハルキスト持論はある。日本の文学好きに一番読まれているの作家が村上春樹なので、小説に少しでもそれっぽいところがあれば、春樹風と言われてしまうことである。 さて、上田岳弘の「塔と重力」は、そんな春樹風と言われてしまうような小説である。 …

『しんせかい』山下澄人

最新の芥川賞作、山下澄人の『しんせかい』は、幻のような小説である。 似ているような小説がほかにありそうだけどない、新奇な小説で、芥川賞にはふさわしいように思う。 あらすじは青春小説そのもので、また主人公の名が作者の名である通り、私小説でもあ…

『世界でもっとも美しい10の科学実験』ロバート・P・クリース

歴史上でも重要な、これら10の実験をすべて知っていた人は意外と少ないのではないか。 僕が初めて知る実験もあった。1つ目の実験、「エラストネスによる地球の外周の長さの測定」は紀元前3世紀のギリシャで行われた。この実験における、重大なパラダイムは、…

『きみの言い訳は最高の芸術』最果タヒ

僕が最果タヒを知ったのは、『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』という素晴らしい題のついた小説で、それ以来、彼女の言葉に惹かれている。 初エッセイ集の『きみの言い訳は最高の芸術』には、共感や気づきや、あるあるといったモチーフ…